スタッフルームに行く直前、5番テーブルをちらりと見る。


窓から入る陽の光が、また、いい感じに二人を包んでいて。


温かい飲み物を前に、何やら楽しそうに笑っている。


……どこにでもいる、ごく普通の、幸せそうな……カップル。


うん、そう見える。


急いで引き上げ、スタッフルームに入り、カフェエプロンを丸めて投げ出す。


なんなんだよ、藤浦さん。


女友達だけじゃないじゃん。


あんなオオカミ男にも、あんなに楽しそうに笑いかけるんじゃん。



テーブルの上に、テイクアウトのホットドリンク用のカップが置いてある。


……まだ温かい。


一口飲むと、それはまさかのハニージンジャーミルクティーで。


俺は、スタッフルームで1人、泣いた。


甘くて、スパイシーで、幸せそうな味がした。