__三週間後、会社からの帰り道にて

俺はタバコをふかしながら、いつもと同じ道を歩いていた。

それは、ふと横に目線をやったときだった。

俺の目に飛び込んできたのは、点検中の黄色い看板を掲げたごく普通のマンホール。

気づけば俺はそれに引き寄せられるように、歩みを進めていた。

何の変哲もないマンホール。

俺は、蓋の開けられたそれを覗きこんだ。

「…?」

暗闇のなかに、確かに俺を捉えるふたつの目。

暗闇に映える真っ白な服。

長い黒髪。

その姿はよくある幽霊のそれだったが、なぜだろう。

恐怖は無かった。

いやむしろ愛しささえ覚えた。

どれくらいの時間、その女と見つめ合っていただろうか。

俺は何か思い出したように我に返り、また帰宅道に戻った。

その後は何か起こることもなく、1日は終了した。