15年前の朝──。


この家の主である、ミドリ様が玄関を開けると、なんと。


生まれたばかりの私がタオルにくるまれた状態で、紙と一緒にバスケットに入れられていたそう。


その紙には“命名 桃花”と。


それから

「見ず知らずの貴女へ

突然、桃花を置いていってしまって申し訳なく思います。

訳あって、私はもうすぐ、この世からいなくなる身です。


この子には、この世界に頼れる人がいません。

親族がいないのです。

なので、貴女に引き取って貰いたいと思っております。

厳しく育てていただければ、どんな教育でも構いません。
とにかく、厳しく育てて下さい。


ワガママばかり言って、すみません。

桃花をよろしくお願いします。


音羽」


と書かれていたそうだ。



そんなこんなで、私は御堂家に引き取られ、紙に書かれた通りに、厳しく育てられている、って訳。


──厳しく、のニュアンスが少し違っている気がするけども。


けど、この家に住む2人を見ていると、厳しく育てていただいてて良かったなと思う。