「謝らないでよ。今日、理久に画像見せてもらったの」


――画像?


「ケルントナー通りのヴァイオリン王子」


郁子は穏やかにフフっと笑う。


――何、それ? もしかして……あいつ
Michael? Guy, wann haben......

詩月は、いつになく興奮気味に、声を上げる。


「あの……周桜くん」


――あっ、ワルい。って、君……ドイツ語、しっかり学んだらどうだ。留学するなら、喋れないと苦労する


「理久に教わっているんだけど、イマイチよくわからなくて」


――理久に? あ……彼には語学より、数学を教わった方がいいかな。
来期、ドイツ語を選択科目にするべきだ


「うん、そうする」


――緒方、ピアノ聴かせてくれない?


「えっ、今? 何を弾けばいいの?」


――楽譜、渡しただろう?「ヴァイオリンロマンス」


「練習して……次に電話掛ける時は、しっかり弾けるようにするわ」