「わかってるけど。あの演奏を聴かされると、やっぱビビる」


「そうか? あいつはJr.と言われて、話題になるのは嫌なんだろうな」


「頑固だな。でも、実力で評価されたい気持ちはわかるな」


「あいつは、親の七光りなんかじゃないよな。……水くさい奴だよ。共演したこと、話もしないなんてな」


「いいんじゃないか。周桜らしくて」

貢は拗ねたような理久に、落ち着いた笑顔を見せる。


「安坂くーん、岩舘くーん、ちょっと」

マスターがカウンターから2人を呼ぶ。


「郁子くんと周桜くんの二重奏を聴くなら、クリスマスだし飾り付けをしたいと思うんだ」


「マジで」

理久が面倒臭そうに呟く。

マスターは、カウンターの上にバサリと飾り付け一式を置いてドヤ顔。


「ずいぶん用意がいいですね」