ミヒャエルは目を皿のように見開き、詩月の演奏を聴く。


――街頭演奏やカフェ、酒場で弾いている演奏とはまるで違う。比べものにならない。これが……詩月!?

ミヒャエルは、立っているのさえやっとなほど、体中がガタガタと震えている。

詩月のヴァイオリンが、ガタニーニ「シレーナ」と知り、尚更に震えが半端ない。


「このヴァイオリン演奏が本番で、どう化けるのか見ものだな」

ハインツが不敵に、口角を上げる。


「……えっ!?」


「クレアによれば、詩月は本番に強いと聞いている」

楽しみだ、ワクワクしている感を隠しきれない、ハインツーのはっきり過ぎる表情。


「よし、いい仕上がりだ」

ラ・カンパネッラ演奏終了後、宗月の快心の笑み。

まさかの1発OKには、ハインツも言葉を失った。


「詩月」


「はい……」