ROSE         ウィーン×横浜

「詩月……」


「何処で、どう弾いても貴方の名を聞かない日はない……『周桜Jr.』……僕は貴方のオマケじゃない」


涙の滲んだ瞳が、黒髪の男を睨んでいる。


「落ち着きなさい」


「……ショパンを弾くとわかる。自分の演奏が……貴方には未だまだ及ばないって」


「……詩月」

ミヒャエルは立ち尽くし、2人の様子を見守っていたが、いきなり詩月の胸ぐら掴む。


「卑屈になるのもいい加減にしろ!! ファザコンも大概分にしろ!! 口を開けば父親には敵わない、オウムみたいにウザいんだよ」


詩月が怯えたように、ミヒャエルを見上げる。


「君、手を」

黒髪の男、周桜宗月はミヒャエルの手をとる。


「あんた、父親だろう。何で、一喝しないんだ」

胸ぐらを掴んだ手が緩められ、ミヒャエルの険しい目が宗月を見据える。