「彼のピアノは周桜宗月の音色より暖かい」
カウンター席に座った初老の客がふと、漏らす。
「『ROSE』を聴くのは2度目だが、マルグリットのサロンで聴いた時は、もっと切なかった」
「ほぉ、彼はサロンでも弾いているのかい」
「たしか、あそこのサロンで常連になるのは難しいって……」
「見事だった。彼はグノーの『アヴェ・マリア』1曲でサロンの客を納得させたよ」
「やるじゃないか」
マスターが明るく言ったのに反し、ミヒャエルの顔は険しい。
「周桜Jr.だからでなく、周桜詩月がってこと?」
「彼を周桜宗月とひと括りにはできまい。彼はサロンで『詩月』と呼ばれているんだ」
ミヒャエルは、当人はわかっていないなと思う。
「詩月は自分自身の実力に気づいていない。自分がどれほど評価されているのかさえ、興味がないようだ」
カウンター席に座った初老の客がふと、漏らす。
「『ROSE』を聴くのは2度目だが、マルグリットのサロンで聴いた時は、もっと切なかった」
「ほぉ、彼はサロンでも弾いているのかい」
「たしか、あそこのサロンで常連になるのは難しいって……」
「見事だった。彼はグノーの『アヴェ・マリア』1曲でサロンの客を納得させたよ」
「やるじゃないか」
マスターが明るく言ったのに反し、ミヒャエルの顔は険しい。
「周桜Jr.だからでなく、周桜詩月がってこと?」
「彼を周桜宗月とひと括りにはできまい。彼はサロンで『詩月』と呼ばれているんだ」
ミヒャエルは、当人はわかっていないなと思う。
「詩月は自分自身の実力に気づいていない。自分がどれほど評価されているのかさえ、興味がないようだ」



