「詩月がショパンを弾くとき、身構える理由も、『周桜宗月Jr.』と言われるのを嫌がる理由も……わかった気がするよ」
宗月はフッと穏やかに笑う。
「宗月は詩月を前にすると、即座に仮面を被る」
宗月は聞こえないふりをし、グラス酒を口に運ぶ。
「この男は、詩月がいつか自分と肩を並べる日の来ることを、誰より心待ちにしている」
マスターが愉快そうに口角を上げる。
「それなのに詩月の前では、それを悟られまいと必死だ」
「詩月のスマホの着信音、凄く切ない曲なんだ」
ミヒャエルが思い出したように言う。
「何という曲だね」
「アマンダ・マクブルームの作詞作曲した『ROSE』」
「……愛はナイフか。詩月にはクレアが愛で、私はナイフなのかもしれないな」
宗月は肩肘をつき、ゆっくりとグラス酒を飲み干した。
宗月はフッと穏やかに笑う。
「宗月は詩月を前にすると、即座に仮面を被る」
宗月は聞こえないふりをし、グラス酒を口に運ぶ。
「この男は、詩月がいつか自分と肩を並べる日の来ることを、誰より心待ちにしている」
マスターが愉快そうに口角を上げる。
「それなのに詩月の前では、それを悟られまいと必死だ」
「詩月のスマホの着信音、凄く切ない曲なんだ」
ミヒャエルが思い出したように言う。
「何という曲だね」
「アマンダ・マクブルームの作詞作曲した『ROSE』」
「……愛はナイフか。詩月にはクレアが愛で、私はナイフなのかもしれないな」
宗月は肩肘をつき、ゆっくりとグラス酒を飲み干した。



