ROSE         ウィーン×横浜

ミヒャエルが「たしかに詩月にとって周桜宗月は化物かもしれない」と、つられて笑う。


「できるものなら、宗月と詩月の二重奏を聴いてみたいな」


「詩月は申し出があれば拒まない」


「ほお、あの詩月が……楽しみになってきたな」


「お前さんたち、余裕かましてていいのかい?」

暢気に笑うハインツに、マスターが声を張る。


宗月が「エオリアン・ハープ」を弾き終え、カウンター席に戻る。


「まだまだ詩月に追いつかれるわけにはいかんよ、マスター」

ミヒャエルには、宗月が自信たっぷりに見える。


ミヒャエルは自ら仕組んだとは言え、「木枯らし」を弾いた詩月の思いにこたえるならば、宗月には「エオリアン・ハープ」ではなく「木枯し」を弾いてほしかったと思う。


「あの……もしも詩月が同曲対決を望んだなら、貴方は詩月の思いにこたえ、本気の演奏を……」