ROSE         ウィーン×横浜

「俺が勝手に、詩月をかまってるというか……放っておけないんだ。詩月はどう思ってるかは知らない」


「はは、放っておけないか。たしかに詩月は霞みを食って生きているようなイメージがあるな」


「あいつは無茶をしすぎるし、自分に厳しすぎる。あれでは窒息してしまう」


「詩月のその気質は、宗月似だ。君、詩月と『コンサート』を聴きにきなさい」

ハインツは、ミヒャエルにチケットを2枚差し出す。


「詩月は、もしかしたら持っているかもしれないが。3時間前からの音合わせも聴きにきなさい。手はずは整えておくから」


「えっ!? 聴いても……」


「本番前の宗月は神経質になってはいるが……こっそりならね。詩月には宗月が化物ではないことを知ってもらいたい」


カウンターの中。
マスターが声を上げ笑う。