「晴ちゃん!!」

人がごった返す校門の前で、懐かしい声が俺を呼んだ。

瞬間、あの日から止まっていた俺の時間が動き出した。

未来が俺の前から離れていった、あの日から。

「未来!!」

人をかき分けかき分け、未来に駆け寄る。

ぶつかる人々が怪訝な顔で俺を睨む。

でもそんなの知ったことではない。

未来。

「晴ちゃん!久しぶり。高校、選んでくれたんだね!」

未来がにっこりとほほ笑む。

ああ、会いたかった。

会いたくてたまらなかったんだよ。

俺、おまえのために頑張ったんだよ。

「まだ合格かどうかわからんし!はよ見に行こう!」

「あ、そうだった!行こう!」

はっとした表情をした未来は、俺の手を引いた。

あの日と同じように、冷たくも暖かい手で。

俺もその手を握り返す。

ぎゅっと、離れてしまわない様に。

「ちょっとどいてくださーい!」

未来は発表掲示板の前に集まる人たちを一掃して進んだ。

「ほれ、貸してみ!」

「おいっ!何すんねん!」

未来はパっと俺の手から受験番号表を取った。

そして俺の番号を追う。

どくんどくん。

鼓動が脳に響いてくる。

うっすらと汗が浮かび上がってくる感覚。

この日のために一年間を注ぎ込んだんだ。

未来と同じ高校に行くために。

その時、

「1288、1290、あ、あった!!あったよ!1295!!!!」

未来が大きな声をあげて反射的か、俺を抱きしめる。

「うおっ、未来!?」

柔らかい体からその体温を感じる。

合格したことへの喜びか、はたまた抱きしめられたことへの驚きか。

いろいろな感情が胸にこみ上げて溢れてくる。

「あ、ごめん。つい。」

ぱっと離れた未来の手。

その部分からじわじわと血液が流れだす。

ふんわりと残る未来の感覚。

出来ることならもう一度、そのぬくもりに触れたい。

だが俺にそんな勇気があるはずもなかった。