_それから2か月後、未来は卒業した。

「晴ちゃん元気でね!…って言ってもご近所だし、すぐ会えるか。」

「お互い忙しくなるからそう簡単には会えんよ。」

「そうかなぁ。まあでも、晴ちゃんが来年うちの高校入って来てくれたらまた一緒に登下校しようね!」

「もちろんや!絶対絶対合格してみせる!」

「うん。応援してる。…じゃあそろそろ行くね。バイバイ!」

「うん。また。」

未来はゆっくりと後ろを向いた。

そして歩みだす。

俺から離れて行く。

まって、俺まだお前に言いたいこと、

「未来!」

俺が呼び止めると未来は不思議そうに振り向いた。

「もう、なに?」

そして呆れたように笑う。

言おう。昨日からずっと心に決めていた言葉。

俺はお前の事が_

「元気でな!高校でも頑張りぃよ!」

「なにそれ!わかってるって!」

未来はまた可笑しそうに笑えばまた歩き始めた。

どんどんその華奢な背中が小さくなっていく。

言えなかった。

たった一言。簡単な言葉。

『好き。』

「ホンマなにしてるんやろ…。」

ため息。

自分の情けなさに嫌気がさす。

未来の前ではなんとか笑顔で居たけど、校門から未来の姿が見えなくなったとき俺は崩れ落ちて泣いた。

どんなにいじめられても涙を流すことは無かったが、不思議と涙が止まらなかった。

熱い涙が不愉快にまとわりつく。

ぽたぽたと落ちる涙が広がっては消える。

今の俺が出来ること。

その日から俺の猛勉強が始まった。

不登校気味だった俺は右も左もわからない状態で。

何度も投げ出しそうになったけど、未来の事を思えば頑張れた。乗り越えられた。

クラスメイトが俺の存在を忘れて遊びふけっている間、俺は机に張り付いて勉強した。

学校に行って俺の教科書が落書きだらけで捨ててあっても、何度も教師に頭を下げて借りた。

そんなんで俺の日々は流れて行った。

クラスメイトから俺だけが隔離された空間。

俺だけが違う世界で生きている。

孤独のなかではちっとも楽しいことなんてなかった。

それでもかまわず勉強する。

勉強して、勉強して、

やっと迎えた合格発表日_。