【神原晴也side】
 _____三年前、とある日

俺は車に揺られていた。

目の前を俺らの荷物を積んだトラックが走っている。

転勤族の俺たち家族にとっては引っ越しなど慣れたものだ。

だが今回は少し訳が違った。

幾度となく引っ越しを経験したが、関西から出るのは初めてだった。

今回俺らが移住するのは東京。

その街をテレビの画面越しにしか見たことがない俺は、その異郷の地に心躍らせていた。

_と、ともにどうしようもない程の不安もあった。

俺は学校を転々としていたため、親しい友人と呼べる人はおらずいつも一人だった。

だが、ずっと何ともない平気なフリをしてきた。

どうせ親しくなってもすぐ離れてしまうのだから。

仲良くなってしまえば別れは辛い。

だから積極的に友好関係を築こうとはしない。

友達なんて、いらない。

でも、本当は違った。

皆と仲良くなりたかった。

皆でサッカーをして、流行のゲームでもりあがって。

俺はただその光景を見ていた。

皆とは離れた、薄暗い部屋で。

ずっとずっと羨ましかった。

俺もその中に入りたかった。

だが、世間は容易に俺を入れさせてはくれなかった。

何校かで俺はいじめの標的にされた。

上履きはぐしゃぐしゃに濡らされ、教科書はいつもゴミ箱の中。

辛かったがどうしようもなかった。

頼れる人なんて俺にはいない。

自分しか、信じられる人なんていない。

俺はひたすら歯をくいしばって耐えた。

_そんな経験しかしたことの無い転勤人生だ。

今回もどうせそんなんで終わるだろう。

いや、そうに違いなんだ。

俺はわずかに抱いていた期待も無理やり抑え込んだ。