取り残された俺もとぼとぼと歩きだす。

シンと静まった校舎に居るはずもない優愛の姿を探しながら。

何が俺たちの溝を広げていったのか。

そんなこと、いくら考えても答えは出ない。

出せる筈もない。

でも俺は信じている。

いや、ただの願望にすぎないのかもしれない。

もしかしたら、俺のことを探して待っているかもしれない。

付き合い始めたばかりのあの頃のように茅一緒に帰ろう。って言ってくれるかもしれない。

そんな淡い期待を抱きながら、気づけば俺は校門に立っていた。

「あるわけない、か。」

やっぱり俺は馬鹿だ。

避けられている事は重々気づいている。

そう、嫌われているに違いない。

なのになんでだろう?

俺はまだ、優愛の事がこんなに好きなんだ。

会えなかったとしても、会話なんて無くても。

「_なにそれ!本当?」

ピタリと歩みが停止する。

突如俺の耳に響く声。

俺の心臓がピッチを上げて唸る。

俺がずっと聴きたかった、最愛の。。。

「優愛…。」

本当は叫んで呼び止めてやりたかったけど、俺の声は虚しく風に掠れて消えた。

ひゅうひゅうと唇から微かに漏れる吐息は言葉にはならない。

情けないほど弱弱しい。

じりじりと指先が固まる。

今すぐ飛び出して優愛を抱きしめたい。

それなのになんでだよ。

足は地面に固定されたまま動けない。

今飛び出していけばすべてが終わるような、不思議な予感に支配される。

思考がうまく回らない。

なんで、なんで

優愛。

俺の、大好きな。

優愛?

馬鹿みたいに停止する俺に、優愛はまるで気づいていない。

離れた所に居るから?俺の声が届かなかったから?

違う。

目の前の男に、駒谷霧斗に夢中だから。