人気(ひとけ)のない薄暗い小路。

その真ん中には見覚えのある男女。

風でふわふわと揺れるツインテール。

小柄な少女、未来を抱き締める_

高坂。

その表情は分からない。

でも未来の嬉しそうな、勝ち誇った笑みが安易に想像できた。

二人はこちらに気づいていないようだ。

神原は何処へ行ったのだろう。

いや、今はそんなことどうだっていい。

混乱する私をよそに、人目も気にせず腕をまわした高坂。

ぴったりと重なる二人の体。

嫌だ。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

なんで、どうして未来なの?

未来だったら優愛の代わりになれるの?

認めたくない。

大好きなのに。

高坂のこと、一番好きなのは私なのに。

どうして

どうしてわかってくれないの。

どうして気づいてくれないの?

大嫌い。

高坂なんて。

ぼろぼろとこぼれ落ちる涙は雨と混じって、一層とまらなくなる。

拭っても拭っても、

拭いきれない絶望、嫉妬。

早く逃げたかった。

お願い、早く早く早く。

私は二人がゆっくりと離れ、また小道を辿って姿が見えなくなったことを確認すると真っ直ぐ家に向かった。

また大衆を蹴飛ばすように走って。

大泣きしながら走る私に人々は好奇の目を向けていたが、そんなこと気にならなかった。

私の頭の中にはりつくのは、未来と高坂の姿だけ。

どんなに振り払っても、それが消えることはなかった。

その夜、私は泣き続けた。

ベットの隅で、膝を抱えてやり場のない想いをぶつけた。

電気もつけない薄暗い部屋に、虚しく私のすすり泣きが響くだけ。

自然と意識を手放すまで、そひたすら泣き続けていた。