身代わり彼女、はじめました。【更新中】

_瞬間、押し寄せる人の波。

私は海で溺れた子供のように、その波に逆らえず呑まれる。

「高坂、みんな…、待って!!!」

必死で遠ざかるみんなに叫ぶが、その声はむなしく喧騒に消される。

なんで?

未来、協力してって言ったじゃん。

私を信じて頼ってくれたんじゃなかったの?

私が、高坂のこと好きってばれてたのかな。

だからって、こんな_。

ひどいよ未来。

気づいてくれない高坂も。

私は人混みから出ることだけを考えて、がむしゃらに進んだ。

すれちがう楽しそうなグループ、子供達、カップル。

私は構わず押し退けていく。

早く息苦しさから解放されたかった。

「はぁ…はぁ…」

やっとの思いでたどり着いたのは、本堂裏。

本堂の周りに広がる竹林が壁になって、正面からは距離がある。

広い空間に居るのは数人だけ。

気楽で賑やかな雑音が遠くの方で響く。

私の気持ちなんか知りもしないで。

憎たらしい。

「あ、そうだ。電話…。」

なぜこんな事を忘れていたのか、私は慌ててバッグをあさる。

ジャラジャラとしたストラップで釣れたスマホ。

急いで電源ボタンを押した。

が、つかない。

「嘘でしょ、充電切れ!?」

昨日ギリギリまで服装のためにインターネットを乱用していたせいか、充電にまで頭が回らなかった。

最悪だ。

これじゃあ未来の思い通りじゃん。

私は冷たく固い石段の上に座る。

ゆさゆさと覆う竹の葉が、寂しげな音をたてて擦れ合っている。

想っては消えていく、私の心みたいに。

私はぎゅっと裾を掴んだ。

_なんで私ばっかり、こんなんなんだろう。

うらやましい。

優愛が、未来が。

なんで、なんで?

答えのない疑問が私を支配していく。

だってこんなの、私のわがまま。

子供の無い物ねだり。

そんなことわかってる。

でも_。

私の目から涙が溢れそうになった時、

ポツリ。

空から雫が落ちてきた。

なすすべもなく、呆然とただ空を見上げるばかりの私。

そんな私などまるで居ないかのように降り注ぐ雨。

ポツリ、ポツリ

しっとりと私を濡らした。