壁にぴったりと背中をくっつけた女子。

風に揺れる艶やかな茶髪。

頬を赤らめて笑う。

その向かいには背の高い男子。

横顔が髪に隠れて誰かはわからない。

壁に手を押さえつけてじりじりと距離が縮まる。

しばらく見つめあった後、女子の茶髪を愛しそうに撫でた。

軽く額同士をくっつけて、

更にお互いが密着する。

そして、男子が軽くかがんで




_静かにくちづけをした。




初めは優しく。

だんだん甘く、堕ちてくように。

「優愛…。」

私はその光景に心を奪われていた。

気づかれたら不味いというのに、体は固まり動けずにいた。

時間にすれば数秒の出来事。

でも、私の目の奥にはじりじりと焼きついた。

親友のキスシーン。

ガタッ

「」

男子生徒が僅かに後退した時に、机にぶつかった。

その音で私は我にかえった。

やばい、逃げなきゃ!

覗き見してたなんてばれたら大変だ。

私は音をたてないように体制を立て直し、再び廊下を引き返す。

足早に、逃げるように。

そして、優愛とキスしていた男子の事を考えていた。

机にぶつかったとき、微かに見えた顔。

あれは_

「高坂茅(チガヤ)だ。」

あいつは確か、図書委員で一緒だった気がする。

あまり他クラスと関わる委員会じゃないからなんとなくだが、

アイツのことは知らなくもない。

成績優秀、よく響く低い声でメガネがよく似合う。

少しくせっ気で不器用で、


最近できた、優愛の彼氏。