それからというもの、私たちは委員会に遅れことごとく先生に怒られた。

しなくてもいい仕事をさせられ、おまけに罰として先生の荷物を職員室まで運ばされた。

でも、

不思議と苦痛じゃなかった。

それはきっと高坂がいたから。

「すっかり遅くなっちゃったね。」

高坂が腕時計を見ながら、苦笑いする。

「ほんと、誰かさんのせいでね。」

高坂が、手なんか握るから。

「俺は悪くないよ?」

「なんも言ってないでしょ!」

静かな廊下に私たちの声だけが響く。

ずらりと並んだ窓から射しこむ夕日が、廊下を橙色に染め上げていた。

まるで、

昨日のように。

ふと、隣にいる彼を見たとき

その横顔と昨日の記憶が重なって、

なんとも言えない感情が私の胸を支配した。

優愛に向けられた、

あの眼差し。

「おい、」

「えっ」

ぼーっとしていた私は、高坂の声で我に返った。

俺の話聞いてた?と、私の顔を覗きこむ彼。

「ごめん、何?」

「今日まぁ、俺のせいで遅くなったし家まで送るよ。」

「え、良いの?」

一緒に、帰れるの?

「ん、いいよ。
 でも、



 優愛には内緒な?」

どくん、

『優愛には内緒』

この言葉が、私と高坂の間をきっぱりと区切った気がした。