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震えたスマホの画面を見て、一瞬美和は固まった。


「はい、ごきげんいかがですか一枝さん」


いつも通り、ネアカに出る。


「ご機嫌麗しいよ」


皮肉っぽいのは変わらないが、声に凛とした張りは無かった。


色々聞きたいことはあったが、美和は触れなかった。


体調の事とか。


今どこで暮らしているのかとか。


組の跡継ぎとして甥っ子が産まれると、一枝は全てを捨てて、どこかへ行ってしまった。


全てだ。


夫にまでなった尚也さんが必死に探しており、美和の所にも聞きに来た。


でも、それを一枝さんは十分予測しているのだろうから、あえて言わなかった。