傍で見ていた美和は、あの男が捨てたわけでは無いことを知っていた。
麗華に言わせると、そういう関係以前の、単なる友達だったらしいが。
後に、麗華が大学1年の春休みに、向こうの大学まで会いに行ったことも聞いている。
帰国して“いなかったと”カラッと報告してくれたが、相当落ち込んでいるのに、なぐさめるのに苦慮した。
その男も死んで4年がたつ。
社会人になっては、もう1年が経とうというのだ。
社会に出たことで、麗華の周りの世界も広がったのだから、次に行っていいはずだ。
「人生、もったいないぞ」
「わかってる」
しみじみした声に、段々と気持ちは前向きになっているのだろう。
「わかってる」
もう一度、麗華は呟いた。

