「ピナちゃん、元気?」 「ああ、もちろん」 麗華がピナと呼ぶのは美和の彼女である雛のことだ。 雛という漢字が、古事記で身分の低い者を言うのを知っていた麗華は、ピナと呼んでいる。 “今の時代、気にしないだろう”と美和は笑ったが、小さい頃に祖母に古典を仕込まれた麗華は、気にする所のようだ。 「そっか。 大事にしないとね。 なんせ美和が唯一本気になった相手だし。 これで逃げられたら、後、ないよ」 美和はふあ~いと生返事をする。 重々、わかっているのだろう。