いつだって、さやかは自分の母親に手厳しかった。
だけど今、行われている両親の葬儀で流しているのは、母親が好んで聞いていた曲だ。
時々、座っている父を誘っては、リビングでくるくると踊っていた。
一度だけ、“逆らえない運命に翻弄されるメロディーだよね”、と低く呟いていたことを思いだす。
彼女らしい言葉だ。
さやかは口元に皮肉っぽい笑いを浮かべた。
今、誰かがこの帝国を手に入れようとしている。
それも運命というならば。
両親の棺が土に埋もれていくのをみつめながら、さやかは呟いた。
「挑戦は。
受けるわ」
シンデレラのワルツ。
フィナーレ。
煌きながら魔法の粉が舞い上がっていく。
帝国は新たな担い手へ・・・。
〈end〉

