「あなたにお願いしたいことがあったんだよね」 「はいはい」 「センスはあると思うんだ」 「もちろんよ」 「なるべく毎晩、早く帰るように努力するから」 「うん」 「料理よろしく」 沈黙が漂う。 「はい~?」 「外食、飽き飽きなんだよね。 日本食が食いたい。 といっても料亭の料理じゃなくて。 ごく一般の家庭料理が食べたい」 「何の話?」 「奥さんにお願いしたいことの話」 水を打った静けさ。