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前触れもなく、部下でもあり息子でもある宏樹が、社長室に入ってきた。


そのまま来客用のソファーに座る。


「どうやら行ってしまったようです」


宏樹と麗華の父親は目を見開いた。


「そうか」


低く呟いて、考える表情になった。


「構わないだろう?」
「ええ、そうですね」


宏樹は怜士がアメリカに帰ってしまい、二人の関係が終わったようなのに、意外性を感じていた。


更に、麗華がいきなりNPOを立ち上げ、その仕事に邁進しているのに、恋愛の挫折から、その道に人生を捧げる覚悟がついたのかと、心配もしていた。


仕事をすることは素晴らしいが、宮内家の将来あるいは継続は無視できない。