スマホを置いてしばらく見つめていた。 一枝さんは何に対して後悔しているのだろう。 兄と踏み出さなかったことか。 それとも、尚也さんと踏み出さなかったことか。 遠い異国にいる一枝の姿に思いを馳せる。 青い海に浮かぶ島で、残り少ない命が終わる時間を、短い幸福だった過去を見つめながら生きている。 静かに、一人で。