牧師は怜士の疑問を読んで、穏やかに微笑してうなずいた。 めいめいの墓碑を建てられない。 それは公にできないということ。 最後まで浮世を流しながら、妻がいなかった男。 法的書類にもいたことがない男。 でも。 怜士は穴の中に視線を落とした。 “土の中にいる” かつて春の日に車中で男が言っていた。 遺伝上の母。 「欠かさずいらっしゃっていましたよ」 怜士は口元を少しだけゆるめた。