大きな月だ。


それに向かって怜士は歩いていた。


月に帰るのはお姫様なんだけど。


そのまま怜士が帰ってしまう気持ちにとらわれて、思わず背広の裾に指が伸びる。


まだ、掴めないんだった。


私、がんばらないと。


再び顔が伏しがちになった時、落ちかけた指に暖かさが絡まった。


振り返った怜士が指を絡ませていた。


くすりと笑うと、腕を引かれる。