「ああ、いや。
 なんでもない。
 今のは忘れてくれ」


これを聞くのは早かった。


まだ麗華の中での葛藤が終わっていない。


怜士は視線を外して、再び歩き出した。


「あっと、えーと」


麗華は呟いて、怜士の2歩ほど後ろをついて行く。


気分から、視線は地面に落ちる。


夜なのに落ちる影が黒々しているのに、視線を上げた。