「鱧、嬉しいな」 ぽつりとした小声の呟き声。 怜士は窓の外に移していた視線を麗華へめぐらせて、軽く噴出した。 「語尾にハートマークついてる」 「いいじゃない」 「まあね」 怜士の眦がやわらかく笑うのを見て、落ち着かなくなり、視線を窓の外へ移動させた。 やがて車が着いたのは小さな店の前だった。 でも店構えの雰囲気から、いい店なのはわかる。 磨き上げられた白木の引き戸。 ぱりっとした麻の暖簾。 打ち水がしてある入り口近くには、お約束の盛り塩。 店に入るとカウンターは既に満席だった。