「返す」
「まあ、そうかなと思っていた」
なぜ金髪碧眼しか相手にしないのか、読んでくれてもいいと思うが、それを麗華に望むのは無理ってものだ。
怜士は自嘲を浮かべると、あっさりと指輪をケースに戻して上着のポケットにしまった。
その様子に怜士の本気度が伺えて、わかっていてもいささか傷つく。
「おいおいね」
怜士はさらりと言葉を足した。
探るように怜士の目をみつめると、くすりと口の端で笑われた。
「ここのチョコレートケーキ、絶品らしいよ?
追加する?」
「する」
「愚問だったな」
笑いながら怜士はフロアを見回してスタッフの視線をつかまえ、ケーキを追加注文した。
チョコレートケーキは濃厚で評判通りだった。
なんだか訳わからない事があったけど、料理もケーキも美味しかったから、それで忘れてしまおう。
と、思っていたのに。
今夜もスマホが鳴る。

