NYの夜のことを必死に消そうと、苦悶している麗華を見通しているのか、薄く笑って怜士は黙っていた。
やがて着いたレストランは、母親の知り合いから聞いて気になっていた店だった。
麗華の気分は俄然、上向いてくる。
食事が進むほど、ほどよい酔いも手伝って気持ちがほぐれてくる。
勢い、のどに刺さった魚の骨のように、心の片隅に引っかかっていたことが、軽く口に出てしまった。
「なんというか、彼女、あまり気にしないタイプに見えるけど。
でも面白くないと思うよ」
言っている意味がわからなくて、ワイングラスに口をつけたまま麗華の視線を受けた。
「長年の付き合いで、今泉の生態を理解していても、次から次へと女が増えてしまっちゃ」
麗華はくるくるっと指を回した。
怜士は本当にわからないらしく、眉をよせた。

