隣を歩くのに居心地悪さを感じながら、用意してくれた車に乗り込む。
怜士は車の中へ身を屈め、バッグを座席に置き、花束を膝に載せた。
「麗華、また」
身を起す前に麗華の視線を捕らえ、さらりと言って車の外へ姿が消える。
何か企んでいるような、少し笑いを含んだ表情。
麗華は返答しなかった。
ただ最後、窓越しに別れを告げる微笑を送っておいた。
経験に長けている怜士になら微笑の意味がわかるはず。
漂うバラの芳香に包まれて2ブロックしか離れていないホテルにつくと、支配人に迎えられた。
ミスターダバリードの命により部屋替えをさせていただきました、と言う。
一体いつの間に手配したのか。
案内された新しい部屋はスウィートルームだった上、花束と同じ赤いバラの花で埋め尽くされていた。

