「今日は色々と相談に乗っていただき、ありがとうございました」
昔、家庭教師を辞めることを告げた時と同じ、一線を引く綺麗なお辞儀。
怜士はしばらく麗華の瞳を見つめ返していたが、視線を外した。
「送らせる」
「ありがと」
陽気にパチリとウィンクを送ったが、無表情のままだ。
怜士が麗華のバッグと花束を取ってきた。
受け取ろうとすると、かわされる。
「下まで送る」
「ええと。
うん」
なぜだか空気が重い。
エレベータの中でちらりと怜士を見上げると、横顔は相変わらず無表情だった。
昔は無表情の時でも、感情のひだが読み取れたのだが、今やさっぱりわからない。

