「踊ろう。
 お嬢様はワルツぐらいお手の物だろう?」
「え?でもコーヒー飲んでるし」


なんとなく気恥ずかしくなって反論してみたが、手をとられて立ち上がらされる。


怜士のリードでくるくると回り始める。


麗華は家具にぶつからないか気になって、つい動きが固くなる。


「安心して、行き先は任せてくれていい」


多くを含んだような落ち着いた声に見上げると、深い色の瞳と合う。


ふっと高等部の時に、ホワイトデーでもらったプレゼントを思い出した。


チョコレートで出来たハイヒール。


食べるべきか、冷凍保存にしておくべきか。


悩みぬいて、結局食べた。