「佐和先生。
 まだお茶を教えているよ」


手の動きは止まらず、目だけ向けられる。


「佐和?
 ああ、そう。
 やめないでしょ、あの人」


麗華はかすかに眦で笑う。


怜士の“佐和”という呼び方が、高等部の時、うらやましかった。


今の良くわかっているような会話も。


踏ん切りをつけたと思っても、ジクジクとする。


「絵は描けないぞ」
「うそ、うそ。
 今泉君なら描けるでしょ」
「全く。
 ほら」


舌打ちしそうな表情を作ってから、カップを目の前に置いた。


思わず麗華は噴出す。