『水底』
濁り曇った水の中
腕を一本差し出して
人差し指で触れてみる
ひやりと冷たい塊が
擽ったそうに転がった
ころころころろ
遠ざかる
大事な何かが遠ざかる
私はそれを止めたくて
足を一歩踏み出した
新しい靴のまま
濡れてく裾も構わずに
引き返すことさえ忘れ去って
不透明な水底へ
濁り曇った水の中
腕を一本差し出して
人差し指で触れてみる
ひやりと冷たい塊が
擽ったそうに転がった
ころころころろ
遠ざかる
大事な何かが遠ざかる
私はそれを止めたくて
足を一歩踏み出した
新しい靴のまま
濡れてく裾も構わずに
引き返すことさえ忘れ去って
不透明な水底へ