友花


意を決して、光太くんに話しかけてみることにした。

さっき交わしたのは、会話ではなく挨拶。
挨拶は基本だ。

光太くんはすでに数人のクラスメイトに囲まれているが、そんなことは気にしない。

「光太くん、ちょっと。」

前に立ち、わざとらしく手招きをする。

「告白か!?ヒューヒュー!」

囃し立てられたが、あの話をみんなの前で言う訳にはいかない。

「なに…」

迷惑そうな態度をとっているが、明らかに唇がわなわなと震えている。

「話があるから来て」

そういうと、光太くんは腰を重そうにして立ちあがった。


屋上までの階段を無言で登る。

屋上の扉を開けると、もわもわとした暑い空気と、セミの鳴く声が聞こえてくる。

隙間から覗けないように扉がっちりとを閉め、端に移動する。

「昨日、私にメールを送ったの光太くんなの?」

光太くんは、いきなり本題に入られて、びくびくしている。

「俺だけど俺じゃない…」

蚊の鳴くような声で、光太くんはそう言った。
続けて、

「嬉しくて、他校の友達に携帯を自慢したんだ。そしたら、俺が預かるって、3時間くらい乗っ取られちゃって」

とも言った。

…ふうん。意外だ。
他校にも友達がいたなんて。