俺は急いで立ち上がって、あの声の持ち主が、本当に例乃葉なのかを確かめようとした。


けど。


そこにはもう、誰も立ってはいなかった。


ヒュー…


冷たい風が、俺と隙間との間を吹き抜ける。


俺の耳に届いた小さな声。


それを


時が止まったような静けさが、


その存在自体がなかったかのように思わせた。


「どーなってんだ…?」


俺の、小さな小さな呟きは


屋上に吹くこの風によって


何処かへと消えていった。