「いい加減にしろよっ!」




俺は靴下で滑りながらもなんとか希咲をつかまえることに成功した。




「お前さっきから自分の言いたいことだけ一方的に言い過ぎなんだよ!

こっちは何一つ着いていけてねーっつーの、ふざけんな!」





「ふっ…」




腕をつかまれたまま、キッと俺を睨む希咲。




「べ、別にふざけてないよ!大真面目だよ!」




「じゃさっき言ってことはホントかよ」




「さっきって…」




「屋上で俺のことが好きらしきこと叫んでただろ!?」




希咲の顔が再び赤く染めあがる。




「ら、らしきって何!?ちゃんとす、す、好きって言ったつもりでしたけど!?」




…うっ。



希咲の口から出た不意打ちの“好き”に揺らめく俺。





「…………そうか」



「ちょっと!そうかって何!?何そのリアクション!?何急に落ち着いてるの!?」



「べっ別に落ち着いてねーよ!めっちゃ動揺してるっつーの!」



「嘘つけ!」



「何でこんな時に嘘つくんだよ!」




誰もいない廊下に響く俺と希咲の争う声。




って




「何で俺ら争ってんだよ!?」



「し、知らないよそんなの一誠のせいでしょ!?」



「何で俺のせいなんだよ!?」



「一誠があたしをつかまえるからでしょ!?」



「お前が逃げるからだろ!!」






ハァハァと息切れしながら睨みあう俺たち…



ってこんなんじゃ埒があかねぇ!!






「…と、とりあえず一つ聞きたいことがある」





俺は希咲の腕から手をはなした。



そして一度深く息を吐き出す。





「付き合ってる人とか、蘭子ちゃんと幸せになってとか意味わっかんねーこと言ってたけど…



何アレ?」