「気づいたら夏休みが残り少なくなっていたので…とりあえず、宿題だけは終わらせました」

「うわ〜早っ!感想文だっけ?」

「はい」

「練習の方は、間に合いそうですか?」

先生は立ち上がると、白衣のポケットから車のキーを取り出した。

「ええ…合同練習は新学期からなので、譜読みさえ出来ていれば大丈夫です」

「そうですか〜今年も楽しみにしていますよ〜?本当に間に合って良かったですね〜」

先生は自分の肩に手を置いて微笑むと、用務員室を出るよう促した。

「お戻りはいつですか〜?」

山形さんは座ったままふり返ると、先生にたずねた。

「ちゃんと戻って来ますよ〜高田さんのフォローが、まだですからね〜」

先生はふり向かずに白衣をなびかせると、右手を上げて答えた。

「お待ちしていますよ〜♪バイバ〜イ、深谷君」

山形さんの明るい声に送られ、先生と夕暮れの校内を歩いて行った。