「そのソファー、倒してベッドになるから、そこで寝れる?」

「え、は、はい」

「お風呂、適当に入っていいから。あれ?ご飯は食べてきたの?」

「あ、はい、彰人さんちで」

「じゃ、俺明日も早いし先に寝るから。じゃ」

なんだか、本当に私自身には興味がないのか、扱いがちょっと適当になる。
結局下のズボンを要求する前に彼は自分の寝室へ入ってしまった。
さっきまでルリルリーと、目の色を変えて自分を持て囃していた人間がこうも変わってしまうのかと思うと、ちょっと寂しくなってしまう。

そのソファーで眠る前はそんな複雑な心境だったものの、図太い私は家主が仕事へ行ったのにも気付かない位そこで爆睡していた。しかも綿製のパンツ丸出しで。

眠い目を擦りながら、時計を見るともうお昼前。
いけない、いけない。ここに長居する訳にはいかないのだ、家主が返ってくる前に彰人さんの家へ戻らなくては。しかし、私の服はどこかに隠されてしまっている。ルリルリの衣装か、この借りたTシャツ一枚で家を出るかという、究極の選択に迫られていた。

それは綿製のパンツ丸出しか、局所は隠れているがビキニ同然の恰好で外に出るか、という選べない選択肢。

ちょっと家主の服を拝借しようかと寝室に浸入を試みるも、しっかり鍵が閉められておりあえなく断念。

私は覚悟を決めて腹をくくることに。私はどっかのコスプレイヤーになりきったつもりで、少し濃い目の化粧をしこっそり家を抜け出した。

視線が痛いがこれは私へ向けられているものではない。ルリルリというコスプレイヤーに向けられているものであって、決して仁菜本人に向けられたものではない。そう自分に言い聞かせながら、そう遠くない彰人さんの家へと急ぐ。

美人だけど、あんなおっかない人と結婚して、彰人さんは本当に幸せになれるのだろうか。私だったら、一生をかけて彰人さんに尽くす自信があるのに。

と思ってしまうのだが、彰人さんに行ったら鼻で笑われて身の程を知れって言われそうだ。自分だって不釣り合いだっていうのは分かってる。
けど、そんな人生で彰人さんは本当に寂しくないんだろうか?

あの人を一人の世界に閉じ込めてなるものか、強引にでも割り入ってやる。それが恋愛というものでなくても、もう少し人の温かみというものをあの人は感じた方が良い。

……しかし、帰り道が分からない。キョロキョロしながら人の多い方を辿ってきたら、なんと渋谷の街中へ出てしまった。そして私の恰好に「ルリルリっ」と指をさされ、少しずつギャラリーが増えていく。

「ルリルリだー」
「え?何?なんていうレイヤーさん?」
「ぽっちゃり具合、完成度高いねーっ」
「ねぇツイッターやってないの?」

い、いや、えっと、としどろもどろになり、人だかりに囲まれたところで、警察官に所謂職務質問というものをされて交番へ連れて行かれることに。