容赦なく患者の腕を掴んで立たせようとする。
なんてたちの悪い酔っ払いだ。
「ほら、ふざけてないでさっさと帰って」
「うっ」
途端に下を向いた彼女に、呆れながら聞く。
「今度は何?」
「ぎぼちわるい……っ」
小さな声で振り絞るように言った。
「うぇ……っ」
「えっ!」
患者のえづく様子に途端に、看護師が俺を見捨ててさっと離れた。
急いで彼女の腕を離して距離を取ろうにも、逆に自分の腕を掴まれてしまっている。
引き離そうにも、力が強くて一向に離せない。
「え、マジで?ちょっと待って勘弁して」
いやいや、ムリムリムリっ。
その顔色、洒落になんないっての!
患者の顔色に負けない位、自分の顔から血の気が引けていく。
「ガーグルベースン持って来て、早く!」
遠くから見守る看護師が他の看護師に声をかける。
いやいやそれじゃ俺に被害が出るだろ……っ。
「いや、袋持ってきてっ」
「は、はい……っ」
ぱたぱたと駆け出すナース。
……ーーーっ!!
しかし、時すでに遅し。
彼女の嗚咽とともに、生暖かい感触が太ももに……。
最悪だ……。
「きゃっ、先生、大丈夫ですか……っ」
ただ見ていただけの看護師がこのごに及んで心配そうに声をかけてくる。
間に合わなかった袋を持ってきた看護師は、その場で唖然として立ち尽くしていた。
「……もういいや、入院させて」
茫然しながら、やっとの思いで出た言葉。
「シャワー浴びてからまた来る」


