「…なんで、ここに??」



混乱する私と、固まる藤代くん。



タカの呼吸は治まってきてはいたが、浅めで。


急いでここまで走ってきたかのようだった。



ルナからここまでの距離は、そんなに遠くないにしても。



例えば、私に会う為だったとしても。



タカが、繁華街から抜けて。



ビジネス街にある、カスカコーポレーションの前まで来たことは、今までにない。




「思い出したから。」



私の問いに、タカは藤代くんを見ながら答えた。



「こないだ、会った時からずっと、ひっかかってた。どっかで見たことがあるって。ミサキの兄貴だって分かっても、どうして、カノンちゃんに近づいてるのかがわからなかった。本当にただの偶然なのか、それとも―」




「…違う…」



タカの声に被せるようにして、藤代くんが首を振る。


それ以上言うなと言っているようにも見える。




「零という人間への復讐の為なのか。」



「違うっ!!」




突然、声を荒げた藤代くんに、私はびくりと肩を震わせた。




「最初から、櫻田があいつと接触があるなんて、知らなかった…」




絞りだすように言う、藤代くんの顔が辛そうに歪む。




「本当に??本当にカノンちゃんの事が好きだったって言うんだ?」




タカは至って冷静な声で、そんな藤代くんを見ている。



「じゃ、なんで―」