「とーちゃく!」
公園の段差を飛び越えて、体操選手のポーズ。
全力で走っても、息が上がらないのは普段からのトレーニングのおかげ。
最初の方は、走ったらすぐにバテてたけど。
ていうか……俺、何やってんだ。
一人でこんなことして、もし人に見られたら、恥ずかしいって程じゃ収まらない。
二人がいれば、こんな事しても恥ずかしくないんだけどなー。
二人も連れてくればよかった。
今度連れてこよ。
ポツ……ポツ……ポツ……
「おぁ?」
突然肩に当たった“何か”を確かめるため、上を向いた。
ポツポツポツポツポツポツ────
雨だ……。
「やべ、傘持ってきてねぇー」
しょうがなく、俺は今着ている上着に付いているであろうフードを探す。
「ないし……」
残念ながら、フードもなし。
「走って帰るしか方法はなしかー」
俺の独り言は、強さを増す雨の音にかき消されていった。


