「いただきまーす」
「いただきます」
「いただきやーす」
「い、いただきます……」
テーブルに出された料理は、案外一般的なものだった。
フランスパンに野菜サラダ、スクランブルエッグにオレンジ。
でも、
「お、美味しい……!」
「だろ?礼智が作ったんだぞー」
嶺君が自慢気に胸を張る。
フランスパンはカリフワで、スクランブルエッグはトロットロ。
口の中に入れた瞬間とろけた。
嫺君って、料理男子なんだぁー!
あー、友達に教えたい!
……いや、駄目か。
言うと色々面倒なことになっちゃうし……
ファンの中で、アタシしか知らない、秘密ってことにしよう。
「篠原さん、時間、大丈夫?」
「え?」
奏ちゃんが時計を見ながら聞いてきた。
壁にかかっている時計を見ると、もう、七時を回っていた。
「学校!」
急いで朝ご飯を流し込む。
流し込んだ。
流し込んで……
「制服、どうしよう……」
また、問題が出てきた。


