「あ」
突然、嫺君が何かを思い出したようにアタシの方を向いた。
な、な、な、な……
なんだ?!
「ど、どしたんですか?」
「パジャマってさ、どうすんの?あと風呂とか……」
あ…………
忘れてた……
服は濡れてるし、これ一着だし、スマホと財布しか持ってない。
「パジャマは、俺ら誰かのを使うとして、お風呂は……先入った、方がいいよ、ね?」
嶺君が、アタシ達の表情を伺いながら言った。
「そう、だな」
と、嫺君。
「だね。篠原さん、それでいい?」
と、奏ちゃんが聞いてきた。
答えは勿論……
「あ、はい。それで……それがいいです」
泊めてもらえるだけ、有り難いから。
アタシは、奏ちゃんに笑顔でそう言った。
「オッケー。じゃ、もうお風呂沸いてるから、入ってきていいよ?」
「あ、はい。ありがとうございます」
アタシは、小走りでお風呂を目指し、リビングを出た。
リビングから出た廊下は、ヒヤッと、冷たかった。
リビングの暖炉で体が暖められ、その温度に馴れてしまったせいか……
「あれ?」
ここで、ふと、疑問を抱いた。
「お風呂って……どこだ?」
アタシはヒヤッと冷たい廊下に、一人。
ここがどこだか、さっぱり分からない、知ったこっちゃない。
リビングに戻ればいいんだけど、もうすでに、一人で目的地を探索していたもんだから、戻りたくても戻れない。
つまり、世に言う────
迷子です。
高校生でなっちゃいました……
しかも、家のなかで。
いや、でもこんな広い所だからしょうがないか。


