家出少女の拾われ先はテレビの中の人達でした。


暖炉に暖められたリビングに人気アイドル『wish』が三人揃っている。

そこに居るアタシは、幸せ者だろう。

さっきから、心臓の音が気になるが……

暖炉の近くにあるテーブルを囲み、一人掛けの椅子に奏ちゃん、三人掛けのソファーにアタシ、嫺君、嶺君の順に座った。

アタシの濡れた服は、さっき嶺君からバスタオルを借りて、水を拭き取った。

大ファンの人だったら、キュン死というヤツをするんだろうな。

アタシも少し危なかった。


「…で、落ち着いたか?」


嫺君がコーヒーをすすった。

絵になるな~と、その黒髪に透き通るような白い肌を見つめた。

絵本の中の王子様って感じ。


「な、何だよ」


不機嫌そうな声にちょっと焦り、「格好良かったから」と、素直に言ったら、顔を赤らめ顔を伏せた。

……変なの。


「落ち着いた?」


「あ、はい。体が温まりました、本当にありがとうございます」


奏ちゃんに渡された紅茶を飲み干し、礼を言った。


「……じゃ、僕らのこと知ってると思うけど、一応自己紹介しよっか」


そうして、テレビの中の人達の自己紹介が始まった。


「知ってると思うけど、華幡奏太です。よろしく」


奏ちゃんが、礼儀正しく一礼。

はい、知ってます。


「俺は、蒼峰 嶺で~す!ヨロシコ☆」



ウインクとピースをする、嶺君。

貴方だから許されるんだよ。と、心の中でツッコむ。


「嫺 礼智(ミヤビ ライチ)。よろしく」


ほんとに一言だ。

やっぱり、一般人がこんなところに来るのは嫌だよね……


「あ……えと、アタシは、篠原美夜です。よろしくお願いします」


奏ちゃんに習って、礼をした。

礼をしたけど……

今、信じられないぐらい心臓がバックンバックンしてるよ?!

さっきよりも酷くなってるよ?!

大ファンじゃなくとも、芸能人だ。

落ち着いたふりしてるけど、やっぱり興奮するよな。