アタシの時計は八時を指す。

月が輝く、真冬の夜。

電灯だけが光る静かな公園。

本当はこんな所に居たくないんだけど、でも、家にも帰りたくない。


「ひっくしょん!」


くしゃみ、これで何回目だろう。

冬の夜はやっぱ寒いな~。

気温を確かめるために、スマホの電源を入れた。

一応、スマホの着信履歴を確認。


『着信 母・母・母』


うわ、すごい。

一分感覚で電話が鳴ってた。

それも、スマホの電源を落としてたから、気づかなかったんだけど。

この、着信履歴。

寒空の下、公園で暇をつぶしていること。


アタシ、篠原美夜(シノハラ ミヨ)十六歳は、今夜、家出しました。


……それにしても、寒い。

体中が震えてる。

鳥肌たってるし……。

このまま居たら、凍え死んじゃう。

でも、家帰りたくないし……。

とりあえず、温かい飲み物を買おう。

ズボンのポケットから、財布を取り出して、残金を確認した。


「嘘、でしょ」


財布の中には、十円玉が五枚、一円玉が三枚。

くそ、プリクラにカフェにつぎ込みすぎた。

普段から貯めとけばよかった……。

これじゃ、何も買えない。

どうしよう。

頭を抱えるアタシに、そっと何かが触れた。