「先程は、失礼なこと言っちまってすんませんしたァ!」
「俺らのこと舎弟にしてくださいっ!」
赤ら顔でトンデモ発言を放ちつつ、『はぁ! ?』って顔でフリーズするアッくん先輩のもとに、ずしゃあぁというスライディングかーらーのー見事な土下座。
いやいや何その変わり身の早さ。
しかも "舎弟" って。あんたらの中で先輩どんな立ち位置なんだよ。
などとドン引きするあたしをチラ見して、苦笑混じりにパクパクと口を動かすアッくん先輩。
……ん? 何?
4文字の単語みたいだけど、きちんと読み取れなくて眉を寄せる。
すると彼はフッと柔らかに口元を緩めて、未だに土下座中の哀れなモヒカン君の頭上を飛び越え、かけ足であたしの眼前へ。
そして、流れるような動作で地面に膝をつき、どこぞの王子様よろしくあたしの手の甲にチュッと短くキスを落として──
「逃げるぞ」
ニヤッといたずらっぽい笑みを浮かべた次の瞬間、ベンチに座っていたはずのあたしの体が宙に浮いた。
「ひゃっ! ?」
こ、こ、これは…!
齢(よわい)16歳にして、"初・お姫様抱っこ" でありますか!!?
うわぁあ。さっきまでは全然いなかったはずの通行人にめっちゃガン見されとるぅ。
えも言われぬ羞恥が押し寄せて、ボンッと顔が熱くなった。

